Hiroko Murayama

「人生フルーツ」津端修一さん・英子さんとの思い出・そして映画を見て思うこと

「人生フルーツ」

ある日、一通の郵便ハガキを受け取りました。
ハガキには、津端修一さんと英子さんご夫妻が笑顔で写っています。


2015年の夏に修一さんが亡くなられたというのは、友人伝いやインターネットなどで聞いていたので、
思い出して、少し寂しい気持ちになりました。

ハガキをよく見ると、「人生フルーツ」という映画の宣伝のようです。
サブタイトルには、「人生は、だんだん美しくなる。」と書いてあり、ナレーション樹木希林さんとも書いてあり、、

どういうことだろう、、、
私は、ハガキを何度か裏表にしてみたり、文字とにらめっこをして、
やっと、修一さんと英子さん、お二人のことが映画になったんだんだと、理解ができました。

憧れのお二人の暮らしがドキュメンタリー映画になったんだと思うと、
急に私の胸は、ワクワクしはじめました。
ハガキは、試写のご案内で、早速私は映画館へ向かったのです。
















「土を作られるなら早くはじめたほうがいいですよ。」
「津端修一さんと英子さんとの思い出」

雑誌の撮影でお二人に会ったのが最初の出逢い。
その後、お手紙のやり取りを何度もさせていただいて、
私の個人的な作品撮影にご協力をして頂けることになり、お会いしたのが2回目でした。





















主人と一緒にお宅に伺うと、修一さんが大きな扉をガラガラッと開けて
どうもどうもと笑顔で迎えてくださいました。
奥から英子さんも出てきて、お茶を進めてくださり、お宅の中へ。

白いテーブルクロスがまぶしく、お茶やお菓子を出す英子さんの仕草が温かく感じられたのが印象的でした。




















そこで、私たちは、たくさんの話をしたように思います。
したというか、伺ったというのが正しいですね。

修一さんは、愛知県岡崎市のご出身。英子さんは、愛知県半田市のご出身。
私は愛知県豊田市の出身ですと話すと、修一さんが、豊田のどの辺ですか?と聞かれました。

足助に近い所で、田んぼや畑が多い所ですと答えると、あの辺りは、水が良いからいいねと言って下さいました。

私も歳を重ねたら、津端さんご夫妻のように豊田の家で、主人と一緒に
野菜やフルーツを作って暮らしたいと話すと、

「土を作られるなら早くはじめたほうがいいですよ。」
「野菜を育てるには土が大事ですからね。」

英子さんがそうおっしゃいました。
修一さんも横で深く頷かれた。































その後、お二人は、土に関するお話を丁寧にしてくださいました。
お話は面白く、勉強になり、一通り伺って主人も私も大いに納得しました。

長い時間をかけて、協力して土を作り、その場所を次の世代へ手渡したいという
お二人への尊敬と憧れが、更に強くなったのを覚えています。





















「僕、他のがいい」
「映画の中で印象的だったこと」

映画の中で、英子さんが手作りのお菓子を修一さんの前に出すシーンがあります。
お菓子を出した英子さんに、修一さんが「僕、他のがいい。」とおっしゃる。
何のことかと思うと、それは、お皿についたスプーンのこと。
英子さんが「お父さんは、金(カネ)は好きじゃないからねー。はいこれ。木のスプーンね。」というのです。

このやり取りが、私には、懐しい場面として感じられました。
なぜなら、私の祖父も金のスプーンが苦手で、全く同じやり取りを、
かつて私は自宅の台所で何度も見たことがあるからなのです。

金のスプーンは、口の中でカチカチして、食べ物の味がわからなくなるから、
木が良いんだと、祖父はいつも話していました。

何故か私は、祖父と祖母のそのやり取りが大好きでした。
だから、今回、映画の中でこのシーンが見られてとても嬉しかったのです。

このシーンを私が好きな理由は、きっと、
英子さんと祖母の愛情が、修一さんと祖父に向かって、
静かにご機嫌に、滔々と溢れ出ているからなのじゃないかなと思うのです。

英子さん88歳、祖母92歳。
私もいつかあんな風に、大きな愛情を自然に出せる人になれたらいいなあ。





























「修一さんと英子さんに久しぶりに会えたような気がした」

映画の中のお二人は、私たちがお会いしたときのままでした。
優しくて、静かで、おしゃべり好きで、真面目な大先輩のご夫婦。

キッチンガーデンと名付けた庭で、フルーツや野菜を育て、
ゆっくりとお茶や食事を楽しみ、時をためる暮らし。


修一さんと英子さんがためて来られた時は、ただ甘いだけではない、
お二人が庭で育てた果実のようなキリッとした甘さの夫婦のカタチなのではないでしょうか。

お二人は、素晴らしいお手本を残してくださいました。
そのお手本を胸に、私たちもコツコツと時をためる暮らしをしてゆきたいと心から思っています。

そして、ためた時を次の世代に手渡す日が来たら、さっと笑顔で差し出せますように。



【人生フルーツ】 






























2017年1月2日(月)よりポレポレ東中野にてロードショー、ほか全国順次