Hiroko Murayama

ダイコンの花

先日、父から、「 野菜がたくさんできて食べきれないので、これから送る」
と電話で連絡があった。
父は、定年退職後、田んぼや畑を耕して楽しんでおり、
野菜など良くできたものがあると送ってくれるのである。

翌日、仕事から帰り夕食の準備をしていると、
宅急便の配達員さんがダンボールを一つ届けてくれた。

中を開けると、新聞紙で美しく包まれた野菜がぎっしり詰まっている。
ニンジン、ダイコン、じゃがいも、玉ねぎ、きゅうりにナス。 キャベツ。


冷蔵庫の野菜室だけではとても入りきらないので、
冷蔵室に分けてやっとドアが閉まりほっと一息。


それから数日は、仕事や所用で何かと家を空けることが多く、
家で調理をすることがあっても簡単な物ばかりで、
冷蔵庫の奥にしまわれた野菜達に出会う機会はなかなか訪れなかった。

少し経って忙しさも一段落し、ほっとした私は、
温かいお味噌汁が飲みたいと思い、
父の送ってくれたダイコンがあるのを思い出して、
ごそごそと冷蔵庫の奥から新聞紙に包まれたダイコンを取り出した。



時間が経ってしまったから、悪くなっているかなと思い恐る恐る新聞紙を広げると、
意外にもダイコンは瑞々しく、美味しそう。
しかし驚いたことに、茎の先に可愛らしいダイコンの花が咲いている。
何日も冷蔵庫の中に入れられていたからか、
細い茎は極端なS字に湾曲し、力ない様子で薄い黄緑色をしている。


可哀想なことをしたなと思った。


花の咲いたヘタは、頃合いのうつわに移して、
我が家で一番よく日の当たるテーブルの上に置いておいた。

翌日見てみると、極端なS時だった茎は緩やかな曲線になり、
花は白さを増して元気に咲いている。


野菜の花は思いの外   美しい。


咲いてしまったダイコンは花に栄養を取られ、食べ時はとうに過ぎていると言われるが、
この花の咲いたダイコンで作ったお味噌汁は、私には格別美味しく感じられた。